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村田編集長のコラム集
2007年10月1日

心の滋養

「全国労保連」2007年7月号掲載

5月半ばからおよそ1週間、4年ぶりに海外へ出かけた。エディンバラまで飛んで、湖水地方へ。ウンダミア湖のクルーズ、シェークスピアの生家があるストラトフォード・アボン・エイボン、そして最もイギリスらしい田園風景が広がるというコッツウォルズ地方からオックスフォードをまわって、ロンドンまでのおよそ600キロのバスの旅。取材も視察もない、友人たちとの気のおけない海外旅行は、国内の旅とはまた一味違う刺激がある。
コッツウォルズには10年ほど前にも1度訪れている。ハチミツ色の石造りの家が連なり、どの庭にも色とりどりの草花が咲き乱れ、個性豊かだ。澄んだ水が流れる川にはカモが、マスが泳いでいる。おとぎ話に出てくるようなかわいらしいホテル、趣のあるみやげ物屋さん。どこを切り取っても絵(え)になり、それらすべてが透明な空気と光に包まれているのである。
イギリスの天候は、晴れていても突然雨が降り出すことも珍しくない。しかし今回は毎日、青空とさわやかな風が道連れとなってくれた。電線がないせいか車窓から眺める草原の広がりは果てしなく、牧草をはむ羊の群れにゆっくりと時が流れることの大事さを教えられる。
ここ2〜3年、私は手術続きで体力に自信がなく、海外旅行を誘われてもいま一つ気乗りがせず、取材もしゅん巡してしまう状況だった。しかし両股関節とも人工にした結果自分でも驚くほど調子がよくなり、それがどの程度のものか、どこかでその力を試してみたいという気はあった。友人の誘いに気軽に乗れたのも、体調がよくなったせいなのだろう。広い空港内の移動も、町の観光も難なくこなせ『もう大丈夫。どこへでも出かけられる』という体力的な自信がついた。同時に『心に滋養を与えることが出来たな』というのが、帰国してからの実感である。「滋養」なんて言葉、ふだんほとんど使わないのになぜか突然思い浮かんだのである。小さいころ大人たちはよく「これは滋養になるからたくさん食べなさい」ということを言っていたっけ。ストレスのたまる放送現場で長年仕事をし、組織を離れてからはペースダウンしたというものの、まだまだ心にゆとりはなかったのだろう。イギリスの田園風景は、私の心にたっぷりの栄養を与えてくれ、しなやかさを取り戻せたような気がする。
人工股関節はもって15年という。そうすると平均寿命まで生きられるとして、私はもう1度手術をすることになるかもしれない。そのことを気にして大事に大事といたわって暮らすより、積極的に今ある日々を過した方が人生刺激的だと思えるようになった。心に与えられた滋養は、もう効き始めている。

全国労保連 2007年7月号掲載(社団法人 全国労働保険事務組合連合会 発行)

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