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村田編集長のコラム集
2007年6月25日

片手で三味線、片手で料理

「全国労保連」2007年5月号掲載

先日、山口県の秋吉台国際芸術村で、片マヒの人たちが不便を乗り越えて身につけた、さまざまな暮らしのコツを披露する会があった。沖縄から来られた方は、マヒのない左手だけで三線(沖縄の三味線)を弾く。20年近く三線を弾いてきたので何としても弾き続けたいと、独自の方法を編み出した。それは左手の人差し指と薬指で玄を押さえ、中指と小指(曲によって違うが)で玄を弾くというもの。間近で手の動きを見ていても、どう動いているのかよくわからないくらい5本の指が目まぐるしく動き、メロディーを奏でる。「自分から三線をとったら何も残らない。子や孫に、じいが楽しく暮らしていることを見せたかった」とおっしゃった。

片手で料理をするコツを披露した方もいる。まな板の端に釘を3本、三角形に差し込み、ここでさまざまなものを固定する。のり巻きをつくるときはす巻きの先を釘に刺して固定。その上にのり、ご飯、具を乗せてす巻きを巻いて引っ張り形をつくっていくのだ。手早く、仕上がりも美しい。

こうしたコツは、医師やリハビリの専門家、また学者などの研究ではとても考えられないものだろう。長いことかかって身につけたワザを人前で披露するまでには、さまざまなかっとうを乗り越えてきた道のりがある。死と向き合ったことは、何度もあるだろう。そうした挫折を乗り越え、もう一度生きてみようとどこかで心のチャンネルを切り換えることができたのだ。障害は人によって程度の差があるので、ほかの人がそのまま披露されたワザを取り入れることはできないだろうが、それでも多くのヒントを得ることはできる。前向きな姿勢から刺激を受けることもあるはずだ。片マヒでできる料理のコツを見ていて、自分でも料理ができるかもしれないと語った人がいた。

毎日入る風呂。家族の手を煩わせることなく1人でのんびり入りたいと願った方は、片手で入浴、ひげそりのコツを話した。1人で入るためには背中も自分で洗わなければならない。そのため1年がかりでリハビリの先生とともに、前屈姿勢をとれる訓練をし、マスターしたという。(私はこういう暮らしをしたい)という、強い意志が感じられた。
障害をもつとどうしても依存的になる。これができないから〜してと、あれもこれもやってもらってあたりまえの感覚が、いつか身についてしまう。周りもかわいそうだからと、何でもしてあげてしまう。本人の努力では乗り越えられないことを支援するのは当然である。しかし、できることは自分でするというのは、障害があろうがなかろうが、人としてごくあたりまえの生き方なのである。

全国労保連 2007年5月号掲載(社団法人 全国労働保険事務組合連合会 発行)

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