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川柳 選者:「NHKぱらぼら川柳会」主宰 大木俊秀
「NHKぱらぼら川柳会」ライブラリー  

 借りさせるまでは優しいコマーシャル          山形 菊池克二
 定年の見事なソフトランディング             東京 木佐敬久
 お断りしますとひらながの草書             宮城 山河弘道
 やわらかな花芽が溜めているマグマ          東京 佐藤季穎
 物言いはソフト主張はぶっ殺せ              東京 村田昭
 むきかけた蜜柑が知っている用事           東京 佐藤利恵
 倒産のビルから誰か落ちてくる             宮城 山河弘道
 サスペンスドラマが顔負けのニュース        神奈川 大木俊秀
 言い訳を積み込んで出る終電車           神奈川 岡部晃彦
 ほんとうは人が恋しい人嫌い             神奈川 五十嵐修
 職安に身柄あずけたまま冬に              東京 佐藤季穎
 コンビニがあれば生活していける          神奈川 岡部達昭
 スプレーで生活臭を消して出る               東京 村田昭
 女からきちんきちんと生活費             神奈川 大木俊秀
 清貧と言えば聞こえのいい暮らし            東京 大塚牧人
 ふるさとに戻る敗北感は無い             東京 小金沢綏子
 反抗期子の羽ばたきだなと思う             三重 松田順久
 身の丈の答えをくれる里の風             神奈川 後藤洋子
 沈む陽が争いはもう止せという            東京 おかの蓉子
 九官鳥孫の名前を呼び捨てる              兵庫 山本芳男
 順調に老いていますとお医者様            千葉 福島久子
 土の香がしっかり染みている身体           岐阜 武藤敏子
 身体のあちらこちらに父母がいる            愛媛 楠本知由
 お身体をいたわりながら酒たばこ             福岡 川渕学
 貫禄がありすぎ謝罪に向かぬ              東京 原久美子
 さんま来るリズムは秋の鼓笛隊             岩手 小原遊児
 王様の顔でさんまが焼けてくる             新潟 若林柳一
 目が合ったさんま私を放さない             福島 野木尋子
 大トロが旬のサンマに嫉妬する           埼玉 東海林雄一
 テロのない国でさんまが売れてゆく           岩手 鈴木六羊
 太平洋の歌は俺だというさんま           愛媛 渡辺伊津志
 さんま焼く男の白い歯を信じ             福岡 一宮志のぶ
 山国へ来てもさんまは海の色            山梨 樋口すみ江
 日本の笑顔でさんま焼けてくる             埼玉 岡部暖窓
 身の丈の順に買わされてゆくさんま            東京 鈴木清
 毎日がお祭りだったツケが来る             東京 木佐敬久
 恋人のへそをみんなに見せ歩く           神奈川 岡部晃彦
 生ゴミの袋小さく老いふたり              山形 菊池克二
 期限切れ来たもの順に胃に納め            東京 大塚牧人
 完璧な敬語を話し疎まれる             神奈川 岡部達昭
 待合室次々人が居なくなる               仙台 山河弘道
 わが家からとっくに消えたマッチ箱             東京 村田昭
 あじさいの坂を登って行った傘             山形 菊池克二
 もう少し下手な活字はないですか          神奈川 大木俊秀
 肩貸しただけでは済まず共倒れ            埼玉 小川昌之
 病人の手にしっかりとつかまれる            仙台 山河弘道
 その家の貌で玄関昏れかかる             東京 小島満里
 通夜の客まるでパールのコンクール         神奈川 大木俊秀
 和服着る夫となって昼もいる                東京 村田昭
 病む妻の下着を干すと午後になる           山形 菊地克二
 前二輌ドアが開かない駅に棲む              東京 村田昭
 この墓に入れてもらえぬ墓参り            神奈川 大木俊秀
 黒枠とソックリさんのいる遺族            千葉 太田ヒロ子
 馴染み客のれん外しを委される             東京 大塚牧人
 柱時計をみんな愛している家族           神奈川 五十嵐修
 おしゃべりが過ぎて伸びきる花の首          東京 佐藤季穎
 言訳がひとつ浮かんだコンパクト            東京 多田哲朗
 夫かばうときのあなたは美しい            東京 小島満里
 D51に轢かれるのではカメラマン          神奈川 大木俊秀
 広辞苑によればでコラム様になり            東京 大塚牧人
 徒競走ビリが後を振り返り              東京 大塚牧人
 中継のない国会でする昼寝             東京 山河弘道
 秘仏公開悟りに遠い人の群            千葉 太田ヒロ子
 リストラをされて出て行く家族寮            東京 村田昭
 風邪でダウン睡眠不足取り戻す         神奈川 大木俊秀
 腰痛のふたりが出会う数寄屋橋         神奈川 岡部達昭
 煮凝りを溶かすと母は消えている          宮城 山河弘道
 しじみ汁大の男が身をせせる            東京 大塚牧人
 蟹老いて泡もふかなくなりにけり         神奈川 大木俊秀
 日暮れても灯のともらない家の影        神奈川 岡部晃彦
 コンビニに並ぶ孤独な夕御飯           神奈川 岡部達昭
 撤収の早さも葬儀社のマナー           神奈川 五十嵐修
 頼りない男に見えるペアルック           千葉 太田ヒロ子
 農協で借りる手押しの空気入れ         神奈川 大木俊秀
 春の土手母の歩みの遅れがち            東京 小島満里
 追い抜いて行った男の訃報聞く          神奈川 岡部達昭
 ビタミンをアルファベットの順に飲み         東京 大塚牧人
 式典の二列目にいる安堵感             東京 小島満里
 双方が二度目小さな披露宴             山形 菊池克二
 おお怖い妻の発する二人称            神奈川 大木俊秀
 カラオケのマイクやつには渡すなよ         東京 大塚牧人
 染め替えて母の形見を若くする          東京 今井ゆずる
 合格の涙は天気雨ですね             神奈川 大木俊秀
 刺のあることを忘れて薔薇を抱く           東京 佐藤季穎
 ボランティア家では何もしない父            東京 村田昭
 留守電に話す敬語を間違える           神奈川 岡部達昭
 付き合いを妻と競って勝てますか          東京 大塚牧人
 玄関を出る歯車の貌になる            神奈川 五十嵐修
 アーケード出てから駅へ傘の道          東京 今井ゆずる
 罪よりも人を憎んでいる弁護            神奈川 岡部達昭
 立場上妻の肩もつほかはなし            東京 佐藤利恵
 肩入れをすればするほど理が乱れ           東京 村田昭
 よれよれの風呂敷を出る名弁護         神奈川 大木俊秀
 助手席も信号の青主張する            千葉 太田ヒロ子
 実家から土産の倍は持ち帰る              東京 村田昭
 叱られに行く先頭を譲り合う            神奈川 五十嵐修
 故郷の山にまだかと叱られる             山形 菊池克二
 拒まれた日から花屋が遠くなる          東京 今井ゆずる
 目指すもの違うと知って距離を置く        千葉 太田ヒロ子
 タバコ吸うドラマを見ても咳をする          東京 大塚牧人
 母にまだあかぎれ二〇〇二年冬         神奈川 大木俊秀
 海鳴りを聞いているのか山眠る           東京 小島満里
 ハチ公の前で我慢の腕時計             埼玉 小川昌之
 老老介護黙って見てるのは国家          宮城 山河弘道
 人柄がくさめの音と吐き出され          神奈川 大木俊秀
 同じ品ちがいはパリで買っただけ          東京 木佐敬久
 完敗のさばさば格の違いです            山形 菊地克二
 子育てへまた口出しをしたくなり         神奈川 五十嵐修
 真っ黒になったカルテの古戦場           埼玉 小川昌之
 どなたとも木綿どうふはすぐ馴染む         東京 佐藤季穎
 この人も誰か亡くした黒いタイ           神奈川 大木俊秀
 腹立てぬ私に腹を立てている           神奈川 五十嵐修
 傷ついたときは笑ってみせる癖           東京 小島満里
 新世紀やっぱりヒトは殺し合う           神奈川 五十嵐修
 生きるとはたとえば寒の黄水仙          神奈川 大木俊秀
 パソコンの賀状自己満足を刷る          千葉 太田ヒロ子
 一グラム超えて切手を足して貼り          東京 大塚牧人
 帆船の前をゆっくり自衛艦              東京 小島満里
 先輩の苦労話は嫌われる             神奈川 岡部達昭
 苦労かけるねとベットが涙ぐみ          神奈川 大木俊秀
 振り返る苦労はみんな溶けている         千葉 太田ヒロ子
 積年の苦労が膝に眼に腰に             東京 村田昭
 気苦労の影を写した内視鏡            神奈川 五十嵐修
 モニターで納得させる内視鏡             埼玉 小川昌之
 ベターハーフその名からして勝てはせぬ    神奈川 大木俊秀
 その先の口約束をする左遷            神奈川 岡部達昭
 乾杯はコップの泡が消えた頃             東京 大塚牧人
 ほっといてあげる気配りだってある        神奈川 五十嵐修
 落としたら割れるガラスがやはり良い        東京 木村和美
 くさめの連発にたりと笑う風邪の神        神奈川 大木俊秀
 試供品の口紅入れて母の旅          神奈川 五十嵐房子
 卆寿まで使えば声も嗄れる            長野 相島毅一郎
 島々を踏みつけて橋脚は立ち             東京 村田昭
 遠いから空気おいしい住まいです           東京 村田昭
 東京の伯父と呼ばれて多摩に住み       神奈川 大木俊秀
 よく響く声で陰口言う男                 東京 高木欣治
 光っているから偽物ではないか          神奈川 五十嵐修
 そのうちに空気もただでなくなるぞ        長野 相島毅一郎
 落葉に火つけると風が寄ってくる         神奈川 大木俊秀
 点線の私鉄が走るマイホーム              東京 村田昭
 何のためにつけたマークかもう忘れ         東京 木村和美
 どなたにもお供をしますかすみ草         東京 今井ゆずる
 バーゲンを着てバーゲンに見せぬひと     神奈川 大木俊秀
 高層のホテルネオンの上に寝る          千葉 太田ヒロ子
 峰打ちの小言の方が効いてくる           埼玉 小川昌之
 仏壇に飾る写真は病む前の               東京 村田昭
 訥々(とつとつ)もセールスマンの技のうち       千葉 大塚牧人
 泥棒の立場に立って鍵かける           神奈川 岡部達昭
 両の手で受話器を包むいい話            東京 大塚牧人
 峰打ちの小言の方が効いてくる           埼玉 小川昌之
 豊作の案山子とワルツする農婦          神奈川 大木俊秀
 神様が引いているのか後ろ髪            東京 小島満里
 ヨーイドン走る気のない子が一人          東京 木佐敬久
 隣から何度も猫を踏んだ音              東京 大塚牧人
 ファクシミリ余分なことは喋らない         千葉 太田ヒロ子
 遠い野火農を弔う煙とも                山形 菊池克二
 俗名のままで気楽に眠りたい             東京 小島満里
 平凡な病名と知り気落ちする             東京 大塚牧人
 支え合う人という字が崩れだす          神奈川 五十嵐修
 発掘の絵にも人間武器を持つ              東京 村田昭
 寒かろにうちへお入り鉦叩             神奈川 大木俊秀
 かめ虫もいのち貰って来たものを           山形 菊池克二
 事後承諾切り出す風を待っている         千葉 太田ヒロ子
 旅支度胃薬も入れ飴も入れ              東京 大塚牧人
 リダイヤルあなたは留守と知りながら      神奈川 岡部達昭
 鴨鍋へふとよぎるかるがも親子          神奈川 大木俊秀
 腹八部の欲で余生を埋めている         神奈川 五十嵐修
 ちちろ生きのびよ囲炉裏を開くまで        神奈川 大木俊秀
 旅支度胃薬も入れ飴も入れ              東京 大塚牧人
 店員にばっちりサイズ盗まれる            東京 佐藤季穎
 トンネルと橋が鉛を消してゆく           神奈川 五十嵐修
 突然死みたいに枯れたボールペン        神奈川 五十嵐修
 包帯の巻けぬところが痛みます           東京 佐藤季穎
 階段はくだりと脚に言い聞かす           神奈川 大木俊秀
 妻不在さてと立ってはみたものの         長野 相島毅一郎
 上ばかり見ている足を待つ小石            宮城 山河弘道
 太陽が渋滞をすることもある             東京 佐藤季穎
 肝臓が銘柄にまで口を出す            神奈川 岡部達昭
 解剖図思い浮かべて手で探る              東京 村田昭
 わかる人にしかウルカは出しません       神奈川 大木俊秀
 早起きの肺がきれいな朝を吸う          東京 今井ゆずる
 音程のはずれたとこがよく響き            東京 高木欣治
 ご雷名はかねがねなどと女史に言う       神奈川 大木俊秀
 夫妻娘の順で帰宅する                  東京 村田昭
 かあさんの駄目には誰も逆らえぬ        神奈川 五十嵐修
 両面テープ右も左も握手する            千葉 太田ヒロ子
 机の上を片づけて叱られる             千葉 太田ヒロ子
 山男富士に背を向け用を足す              東京 村田昭
 栄転の任地を妻に拒まれる             神奈川 岡部達昭
 兄嫁が来てから里の戸が軋む           東京 今井ゆずる
 面会を謝絶いのちの灯が揺れる          神奈川 五十嵐修
 僕の代わりにねずみ花火が寄っていく      千葉 太田ヒロ子
 以下同文からは拍手も略される           山形 菊池克二
 ふるさとは鶏も地声で鳴いている          東京 今井ゆずる
 Tシャツにレーズンらしいものが2個         東京 大塚牧人
 薄いえにしへネクタイだけを黒にする      神奈川 大木俊秀
 徘徊の母はおとぎの国にいる           東京 今井ゆずる
 全身にくすりを溜めて生きている          神奈川 岡部達昭
 嫁(か)してより俄然がめつくなる長女      神奈川 大木俊秀
 コンパクトの中にも秋は待ったなし          山形 菊池克二
 幸せの両手拡げたほどでよし           神奈川 五十嵐修
 ひたむきに務めを終えしボールペン         東京 小島満里
 ボランティアだから手抜きのないように     神奈川 大木俊秀
 一病が連れを探していて困る             埼玉 小川昌之
 もう吸わぬはずがライター捨ててない        東京 廣越正久
 年寄りがシルバー席の前に立ち          千葉 太田ヒロ子
 お医者様にもかからずに逝ったはは        山形 菊池克二
 八十の母の乳房を拭く息子                東京 村田昭
 うす味に慣れて故郷を遠くする           東京 今井ゆずる
 女子高校生の浴衣と花火する          神奈川 大木俊秀
 まだ帰りつかぬであろう雨の音           千葉 太田ヒロ子
 父の歳父の偉さを知らされる            神奈川 岡部達昭
 偉そうな肩書きだけど暇そうだ              東京 村田昭
 えらいこっちゃ夫終日家にいる            東京 佐藤季穎
 借金を催促しない偉い奴                宮城 山河弘道
 貫禄の白髪上司に嫌われる            東京 今井ゆずる
 元気です医者もデータも裏切って            東京 村田昭
 小さめの傘で善意が濡れている           東京 小島満里
 無人駅へ花をたやさぬ花農家           神奈川 大木俊秀
 花が好きただそれだけで好きになる        神奈川 岡部達昭
 のみきれぬダムはたちまち語彙を捨て       東京 佐藤季穎
 子は宝宝がみんな遠く住む              山形 菊池克二
 米は米屋で酒は酒屋で買う母で          神奈川 大木俊秀
 また誰か来ている母の詫びる声          東京 今井ゆずる
 ヒューズ飛ぶ家庭教師に直させる          東京 大塚牧人
 妻太る娘色づく父枯れる                宮城 山河弘道
 種子を蒔く人の雪形種子を蒔く            山形 菊地克二
 走りたかろう盲導犬も思い切り             東京 村田昭
 まわりにはノイズ本人には癒し           東京 木佐敬久
 門前市牛丼二百五十円              神奈川 大木俊秀
 口紅を一本持って旅に出る             東京 小島満里
 自動ドアひとを選んだことがない         神奈川 五十嵐修
 遠雷にB29の音がする               東京 今井ゆずる
 目と鼻も口も使って手話の人              東京 村田昭
 二日酔いの水を懲りない男たち           山形 菊地克二
 時価とあるメニューは飛ばし読みにする      宮城 山河弘道
 マドンナがあんな男と結ばれる            山形 菊池克二
 落語家の書架に哲学書が二冊          神奈川 五十嵐修
 さりげなく茶髪に席を譲られる            埼玉 小川昌之
 通販のお好きな人とつゆ知らず          千葉 太田ヒロ子
 にこにこと園児を渡らせるダンプ         神奈川 大木俊秀
 病弱の妻へ余生を組み替える。          東京 今井ゆずる
 パンタグラフの痛さを想いしことありや      神奈川 大木俊秀
 元部下と意識するのは元上司              東京 村田昭
 お迎えの傘をしっかり抱いて駅           千葉 太田ヒロ子
 全力で飛ばしていると蝸牛             神奈川 五十嵐修
 思い出に隠し芸だけ残る人              東京 小島満理
 年金が出たな仏間の鉦が鳴る          神奈川 大木俊秀
 火消し壺妻に言えないことばかり          宮城 山河弘道
 さしつかえないから歳を記します           東京 佐藤季穎
 瞬発力のキーワードですどっこいしょ      神奈川 五十嵐修
 ときどきは妻よ女で居てほしい            山形 菊池克二
 まずい字の次に記帳する気兼ね            東京 村田昭
 鉢合わせエレベーターが長すぎる         千葉 太田ヒロ子
 人生がひとつづつある夜の窓           東京 今井ゆずる
 じいさまはもてたお人で通夜の酒          東京 大木俊秀
 落ち着いていいねと雨の二人きり          東京 小島満里
 我慢強かったと通夜に誉められる          神奈川 沖旬秋
 飽きるほどハチ公を見る待ち合わせ       千葉 太田ヒロ子
 苦労した顔はすくない羅漢像             埼玉 小川昌之
 あじさいの隠し男かかたつむり            東京 大木俊秀
 子猫ではないんだ鈴を取ってくれ            東京 村田昭
 どちらまで煙草ののめるあたりまで       神奈川 大木俊秀
 ブレーキのききかないものが人に棲む     神奈川 五十嵐修
 卒論のテーマに遠い今の職             東京 佐藤季穎
 み仏の手の鳴る方へ惚けてゆく           山形 菊池克二
 傘閉じるときにも欲しいワンタッチ         千葉 太田ヒロ子
 気がつけばあんな所に桜の木             東京 村田昭
 滑点滴にワインボトルを吊るされよ        神奈川 大木俊秀
 里の母今日も余計に飯を炊く             東京 佐藤季穎
 エプロンを夫に贈るこれも愛             東京 小島満里
 憐憫で押せば進まぬ車椅子               東京 村田昭
 全身を耳にして足音を待つ             千葉 太田ヒロ子
 滑らかな舌で墓穴をほっている          神奈川 五十嵐修
 最下位を争う戦にも打てず              東京 大塚牧人
 温室を出て行く花の角かくし             神奈川 沖句秋
 もう止めてほしい拍手が判らぬか          東京 多田哲朗
 共白髪拒んで妻のヘアカラー           神奈川 岡部達昭
 留守がちの妻に電話がよくかかる          東京 大石富夫
 五臓六腑二つ以上が病んでいる          東京 高木欣治
 くちびるへこんなにもある紅の色         神奈川 大木俊秀
 東京を恋うる夕焼けだってある            山形 菊地克二
 旅支度目薬も入れ飴も入れ              東京 大塚牧人
 実家から土産の倍は持ち帰る              東京 村田昭
 叱られに行く先頭を譲り合う            神奈川 五十嵐修
 はりかえて障子闇とは白いもの           東京 佐藤季穎
 こわれもの注意の札を古希に貼る        東京 今井ゆずる
 はらはらひらひらふらふらはなふぶき      神奈川 大木俊秀
 カラオケのない居酒屋の吟醸酒           宮城 山河弘道
 医療ミスとは知らない仏たち            神奈川 岡部達昭
 ああ昔ボクが選んだ妻いずこ             東京 大塚牧人
 病院の待合室にいる元気               東京 佐藤季穎
 孫の歌もれて老人ホーム春              山形 菊地克二
 妻のいた頃とは違う靴の艶             東京 今井ゆずる
 神仏もきっとどこかで拝んでる              東京 村田昭
 気を抜いたただ一球の負け戦           神奈川 岡部達昭
 ケータイの電源切って鳥になる           千葉 太田ヒロ子
 肩貸して悪友になる千鳥足              埼玉 小川昌之
 河口には誰も拾わなかった桃            宮城 山河弘道
 点滴をつけて馬券の立ち話              東京 大塚牧人
 車椅子の妻押すために職を辞す            東京 村田昭
 そよ風に押される春の車椅子           東京 今井ゆずる
 ホスピスを見舞う言葉がまだ書けぬ       神奈川 五十嵐修
 床ずれに訊けば親身の度が分かる         東京 大塚牧人
 申告をすませて春の陽に気づき          千葉 太田ヒロ子
 ドクターもストップかけぬ齢になり          埼玉 小川昌之
 ゴメンネと言えば済むのを遺憾だと         東京 大塚牧人
 生きのびて葬式代に手をつける          東京 今井ゆずる
 万歩計もっと笑顔で歩けぬか             東京 村田昭
 この次は誰の葬儀で顔合わす          神奈川 岡部達昭
 見送りの母豆粒になって佇(た)つ         東京 小島満里
 リハビリの箸ひたむきに豆挟む          山形 菊池克二
 敗戦の飢餓の記憶にある大豆          神奈川 岡部達昭
 三歳と五歳豆台風が来る             東京 多田哲朗
 納豆の歌にタクトが忙しい             東京 大塚牧人
 負けた背と知って木枯らし逸れてゆく      東京 今井ゆずる
 自給率どこまで下がる日本語          神奈川 岡部達昭
 靴べらをとどめに褒めて客帰る          東京 大塚牧人
 仏壇の母へ小さな頼みごと            千葉 太田ヒロ子
 雪の嵩嫁さがしてもさがしても           山形 菊池克二
 鱈の身がきりりとしまり北は降る         東京 佐藤季穎
 知恵の輪のように入れ歯を解いて嵌め     東京 大塚牧人
 沢庵を噛む音さえもひとりきり          山形 菊池克二
 寝たきりの母にあびせていたことば         東京 村田昭
 円卓の位置も序列に気を遣う          千葉 太田ヒロ子
 大江戸線で和服美人と隣り合う          東京 多田哲朗
 寝たきりを抱いて昔を語り合う          埼玉 小川昌之
 こわれもの注意の札を古希に貼る        東京 今井ゆずる
 百歳に聞くと嫌いなものがない         神奈川 五十嵐修
 次の職求め掠れるボールペン          神奈川 大木俊秀
 雑巾を縫って昭和を裏返す            宮城 山河弘道
 庭を持つ頃には家族散り散りに          東京 木佐敬久
 手書き文字一文字もないお礼状         神奈川 岡部達昭
 新刊の帯に介護の字が並び           千葉 太田ヒロ子
 繰り合わす万障という義理の数          埼玉 小川昌之
 雪マーク続くあたりに母をおく           山形 菊池克二
 ケータイを持たされ亭主放し飼い          東京 村田昭
 切り口の白さに出逢うお正月           東京 佐藤季穎
 年寄りがシルバー席の前に立ち         千葉 太田ヒロ子
 つみびとのように集まる喫煙所         神奈川 大木俊秀
 一病が連れを探していて困る           埼玉 小川昌之
 見舞客来る寝たきりへ少し紅          神奈川 大木俊秀
 ひと休みしたがる亀が増えている        神奈川 岡部達昭
 定年の机の奥のインク消し            宮城 山川弘道
 いざという時に役立つ皮下脂肪         千葉 太田ヒロ子
 古里の駅にずうっとある鏡             山形 菊池克二
 どなたとも木綿どうふはすぐ馴染む        東京 佐藤季類
 こっそりと近づいてきた介護法          埼玉 小川昌之
 後ろから男は老けてゆくのだな         神奈川 五十嵐修
 こめかみのあたりに昨晩のお酒         神奈川 大木俊秀
 介護してこころ二つがひびき合う     奈良・桜井市 辻野帛子
 日々介護重いさだめとして耐える   神奈川・藤沢市 及川喜子
 介護法利用したいが施設待ち       静岡・清水市 柴田敏郎
 行き届く介護に喜寿の頼り切る    兵庫・伊丹市 倉田眞之助
 介護保険医療費老いにのしかかり         仙台市 星幾代
 デイケアで愚痴も自慢も聞く日和   北海道・帯広市 田村賢治
 人寄れば介護の話二〇〇〇年    栃木・宇都宮市 猪瀬一翠
 介護保険よいという人いわぬ人       愛媛・松野町 岡政市
 母を介護する姿子に見せておく      東京・中野区 大木奈名
 ヘルパーの誠意にはずむ心づけ        千葉・柏市 金子馨
 突然の介護で見よう見まねです      群馬・高崎市 加藤貴美
 介護の手休めて時雨れ聴いている  神奈川・厚木市 落合昌子
 こぼれそうな涙こらえて介護する       東京・杉並区 山本弘
 介護体験交わしお互いがんばろう         横浜市 伊藤春善
 見舞客来る寝たきりへ紅すこし        東京・国立市 沖俊修
 孝行と褒められ照れている介護       東京・大田区 須山周
 足枷と手枷の母を介護する       京都・舞鶴市 浅野精一郎
 子を介護これも一種の逆縁か        千葉・浦安市 小山環
 年金が介護保険にかじられる        東京・小平市 鈴木玲子
 寝たきりへ娘の婿もいい人で          名古屋市 加藤修子
 ヘルパーに子の手も足して母を看る       千葉市 渡辺惇子
 豊かぶる国の不安な介護法      神奈川・藤沢市 妹尾安子
 熱すぎぬように老母へ粥を吹く     福島・いわき市 小川恵美
 介護する愛は札束では買えぬ          大阪市 斎藤結実
 天引きでウムを言わせぬ保険料         静岡市 望月一朗
 ランク付けられて介護の手にすがる 東京・武蔵村山市 久保清美
 介護するほうがされるよりもやつれ     千葉・柏市 野津安司
 妻の父も夫の母も要介護            大阪市 金子清子
 寝たきりへ友の訃報は言わずおく     北海道・函館市 中村綾
 介護体験発表会に人あふれ        東京・町田市 千葉克良
 寝たきりの姉に昔の話する        神奈川・綾瀬市 宮本照男
 出世断念老母を看なくてはならぬ      東京・中野区 沖奈名
 障害の体験生かす介護人        神奈川・藤沢市 妹尾安子
 良くなってまた温泉に行きましょね   石川・羽咋市 今藤かつ子
 ヘルパーを娘のように頼りきり      北海道・旭川市 鈴木俊秋
 訪問看護家族の裏面見てしまい       埼玉・蓮田市 田林晃
 千度いびった嫁だが介護してくれる    愛知・扶桑町 浦嶋隆三
 ヘルパーに元気をくれる「ありがとう」 神奈川・藤沢市 妹尾安子
 徘徊の母を背に負う父の帯        高知・中村市 遠近哲代
 すがる目が介護認定聴いている      横浜市 中根和子
 長男の嫁だ介護は覚悟する       石川・羽咋市 今藤かつ子
 ヘルパーはまず繰り言を聞いてやり  東京・杉並区 田野倉豊
 ヘルパーに元気をくれる「ありがとう」 神奈川・藤沢市 妹尾安子
 温泉へ介護疲れの妻を遣り       千葉・柏市 野津かおる
 老い一人介護保険よ頼みます      岐阜・関ヶ原町 野尻勇作
 ひとときを介護はなれて月といる     新潟市 磯部ハナ
 ローテーション組んだ介護の荷が重い  徳島・阿南市 島田利幸
 介護士の美女の手当に春戻る       岡山市 川本富雄
 介護する身もいたわりに飢えている  京都・下京区 野村千恵子
 寝たきりの祖母をいたわる青スダレ   岐阜・本巣町 古池孤月
 介護の手休め積乱雲を追う       東京・田無市 川口年子
 在宅介護うたい文句でまだ馴れず 神奈川・鎌倉市 保坂みつ子
 美しく老いる話へ介護法         埼玉・飯能市 小川宗作
 介護日を指折り数え待つわたし     徳島・美馬町 加藤文明
 母を看る身です長居はできません    大分・院内町 江口正尚
 介護する嫁に遺言書いておく      長崎市 立川初義
 介護法子より福祉課近くなり      北海道・士別市 斎藤猛
 入院か自宅かいずれか子が決める     兵庫・姫路市 木畑勤
 寝たきりへ向き変え見せる青い空    熊本市 古関実
 要介護2に○がつくM生まれ      広島・大朝町 橋本亜紀
 年寄りが年寄り背負い介護する    神奈川・綾瀬市 宮本照男
 家族とは何かに突き当たる介護    石川・羽咋市 池田はるを
 姑を看る気配りことばづかいにも    東京・中野区 沖奈名
 さよならは畳の上と願う夢     福井・鯖江市 長谷川芙美女
 おかげさまデーサービスのバスを待つ  青森・鶴田町 木村恵子
 定年を親の介護が待っていた      愛媛・松山市 楠本義道
 子育てが終わり介護のお手伝い     横浜市 谷田部冨義
 母さんの面倒看てるぬいぐるみ     石川・羽咋市 長岡弘隆
 若い娘の介護に触れてよみがえる    福島・福島市 吉岡東峰
 長病みの母の手を何度も握る      東京・品川区 金子清利
 病気したことが役立つ介護の手     横浜市 谷田部冨義
 生きる喜びをデーサービスが呉れ 岩手・石鳥谷町 佐々木眞子
 行く道と思えば熱の入る介護      神奈川・藤沢市 妹尾安子
 クラス会介護体験談となる       神奈川・綾瀬市 宮本照男
 くり返す話あいづち打つ介護      東京・国立市 佐藤信子
 自分だけ介護受けると夫決め      横浜市 中根和子
 どうしてもお金のことになる介護    神奈川・綾瀬市 宮本照男
 介護してもらう気疲れなど言えぬ    千葉市 太田ヒロ子
 核家族割り切って待つ介護の手  東京・武蔵村山市 久保清美
 寝たきりの目線に花のある介護    神奈川・藤沢市 妹尾安子
 しゅうとめと実母の二人看てる姉    仙台市 佐藤あきこ
 志ん生の声も介護のお手伝い     神奈川・綾瀬市 宮本照男
 母を拭く湯の熱すぎずぬるすぎず    東京・中野区 大木奈名
 薬より効き目のあったいい介護     横浜市 谷田部冨義
 ヘルパーになって人間取り戻す     山梨市 雨宮五郎
 プライドは惚けぬ傷つけない介護   福岡・久留米市 高柳和花
 寝たきりの老婆が拝む嫁の背      青森・蓬田村 工藤正一
 お世話する心に打算生まれない     神奈川・座間市 江口博
 ビタミン剤飲んで介護へ活を入れ    東京・杉並区 田野倉豊
 梅雨明けの空を羨む介護妻       仙台市 木村郁美
 当たり前のことを介護と騒ぎ立て      千葉市 太田ヒロ子
 点滴と妻を両手に朝の試歩       静岡市 杉山健次
 老介護明日はわが身と腰伸ばす  岩手・陸前高田市 鈴木六也
 実の娘以上の嫁に介護され       東京・国立市 佐藤信子
 なんとなく介護保険に持つ不安    静岡・修善寺町 大城道也
 サービスの違い気になるとなり町   埼玉・東松山市 川上一郎
 介護するまあるい嫁がいてくれる    千葉・柏市 野頭やすし
 寝たきりへ笑顔届けに行く介護    東京・国立市 佐藤のぶこ
 介護するされる歴史は繰り返す    石川・羽咋市 今藤かつ子
 坂道を二人一脚要介護         大阪市 斉藤秀子

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