ここから本文
村田編集長のコラム集
2008年5月26日

障害は「個性」か?

「全国労保連」2008年3月号掲載

 障害は「個性」である、と言う人がいる。障害のある人自身も言う。しかし私はこうした言い方に違和感を感じていた。障害は「個性」という響きのいい言葉で語られるようなものではなく「暮しにくさ」そのものであると、障害者である私自身、思うのである。また障害は「個性」であると言うのでは、障害のある人たちへの真の理解は深まらないとも思うのである。
 昭和41年に、障害福祉への関心や理解を深めてもらおうとNHK障害福祉賞が創設された。これは障害のある人と支える人(家族・学校の先生・職場の人等)の実践記録を募集し、優れた作品を表彰するというものである。私は毎年、受賞者を取材している。今でも忘れられないのは、おととし最優秀賞に選ばれた杉田千代子さん(41歳)の作品。杉田さんは脳性マヒで学習障害がある。中学時代のエスカレートするいじめを乗り越え、得意の英語を生かして仕事を得るまでの道のりを描いた。想像を絶する困難を乗り越えてきた様子が淡々とつづられている。一方障害のある人を支える側の作品では、ダウン症の息子を育て上げ、自らは特例子会社の設立を社長に提案し障害者雇用に貢献した江口敬一さんという方の作品が印象に残る。
 とかくこうした記録は、自分たちのつらさや悔しさをわかってくれない社会への批判になったり、自分はどれだけ苦しみ悲惨な状況に置かれてきたのかということにとどまりがちだが、受賞作品はどれも自らの状況を突き放して見つめ事実を冷静に、客観的に描いている。苦しい状況を乗り越え、自らの力で生きる道を切り開いてきた努力と挑戦が今、生命力輝く刺激的な日々を、彼ら、彼女らにもたらしている。さらにすばらしいのは、障害があるという立場から、誰にとっても住みやすい社会にするため、社会の環境や人々の意識をかえることについての提言を、さり気なく語っていることである。それだけに読む者の共感を呼びさわやかな読後感を与えてくれるのだと思う。
 今国をあげて、障害のある人もない人も共に地域で暮らせる共生社会をつくろうとしている。これまでの日本の社会は、障害のある人たちを「特別な人」とみなし、遠くに隔離し保護してきた。つまり一般の社会から振り落としてきたのである。障害は「個性」であるというようなオブラートに包まれた言い方をしていては事の本質は解決しない。自らの障害と真正面から向き合い、暮しにくさもそのものをなくすための他への働きかけがあって初めて、障害のある人の暮らしにくさが理解されると思う。その結果、障害のない人は何を支援すればいいのかがわかり、真の共生社会が実現するのである。

全国労保連 2008年3月号掲載(社団法人 全国労働保険事務組合連合会 発行)

メニューへ

掲載の記事・写真・図版・映像・音声などの無断複製、転載を禁じます。Copyright NHK/NHK JOHO NETWORK,Inc.
All rights reserved. Do not duplicate or redistribute in any form.